全国漬物探訪

各地で伝え育まれてきた漬物を訪ね歩く

東海漬物

第29回 高知県

取材時期:2013年11月

 数年前から、しょうがが注目されている。とくに寒い冬に体を温める食材として、ドリンクやスープなどしょうがを加えた食品が増え、しょうが料理のレシピ本が何冊も発売され、しょうが料理専門店も登場している。国内のしょうが生産の半分近くは、高知県で栽培されているという。しょうがの本場で、国産しょうがの魅力に迫った。

黄金しょうがの新しょうがで作った「ガリしょうが」は香りがいい

 しょうがは比較的温暖な地域で栽培され、福島県以北ではあまり栽培されていない。全国の収穫量約5万4000トンのうち4割以上が高知県で収穫されている。県内でも、四万十川の源流域・四万十町にしょうが畑が多い。明け方に霧に包まれ、適度な湿度が保たれる環境が、しょうが栽培に適しているようだ。

 10月20日には、四万十町の道の駅あぐり窪川で「第1回しまんと生姜収穫祭」が開催された。同町にある「ホテ松葉川温泉」では、月1回限定で地域特産のしょうがを使った「しょうが風呂」に入ることもできる。

朝もやが立ちこめる四万十川の上流域が、しょうがの名産地になっている

 日本で栽培されるしょうがの品種は、根茎の大きさから「大しょうが」「中しょうが」「小しょうが」に分類される。関東では小しょうがと中しょうが、西日本では大しょうがが主に栽培されている。

 ひと株で1kg前後に生育する「大しょうが」は、晩生で茎や葉が大きく育ち、根が大きな株になるのが特徴。長崎の島原半島の農家が、タイから種しょうがを買ってきて植えたのが始まりだといわれている。

 「私たちが品種改良した『黄金(こがね)しょうが』は、大しょうがと中しょうがの間の中太種です。色鮮やかな黄金色が特徴で、繊維が少なくおろしやすく、しかも退色しにくいんです」

 そう話すのは、坂田信夫商店の清藤(きよとう)浩文専務。1947年に創業し、しょうが作り65年以上の実績を誇る。1985年に開発した黄金しょうがは、しょうがの成長点を培養して、数年かけて品種改良したそうだ。従来の国産大しょうがや中国産のしょうがと比べて、辛味成分の「ジンゲロール」、香りの成分「ショウガオール」が、多く含まれている。

掘り立てのしょうが。今年は雨が少なくて根株が小さめというが、それでも立派に育っている

水はけと雑草との闘い

 しょうが栽培のスタートは、収穫を終えた12月から始まる。水はけをよくするために、直径15cmくらいのパイプを使って、機械で深さ2mくらいの穴を開けるそうだ。その後、サトウキビの搾りかすを堆肥としてふりまき、2月ごろにしょうがが育つのに必要な肥料を施す。

 3月にトラクターで耕して肥料と土をよく混ぜてから、畝を立てる。

 種しょうがを植え付けるのは4月ごろ。深さ20cm前後に、20〜30cm間隔で植えていく。芽が出る方向を上に向けると真っすぐ発芽するので、熟練した人が手作業で植え付けていく。

1:堀り上げる前に、しょうがの葉を機械で刈り、収穫しやすいように軽く土を起こす<br />
2:機械で軽く土を起こしたあと、くわやスコップでしょうがを掘り出す

1:堀り上げる前に、しょうがの葉を機械で刈り、収穫しやすいように軽く土を起こす
2:機械で軽く土を起こしたあと、くわやスコップでしょうがを掘り出す

 5町4反のしょうが畑を管理するのは、しょうが農家の酒井修さん。栽培でいちばん気をつけるところを伺った。

 「やっぱり水管理ですね。水が溜まると病気が広まるのが早いので、最初の穴開けが重要です。病原菌は、雨が降ると流れて畑全体に広がってしまうので、常に見回りして、病気の株を1〜2本見つけたら隔離します」

 発芽してからは、雑草との闘いだという。放置しておくとしょうがより先に草が茂ってしまうが、除草剤を使わないので早めに手で抜いていく。7月ごろになれば、しょうがが大きく育つので、しょうがの葉で土の部分が日影になり、草に負けることはない。

 収穫時期は、10月中旬から下旬にかけて。 しょうがは熱帯性の植物なので、畑に霜が下りるまでに収穫する。葉を根元から切り落としてから、土がついたまま冷蔵庫で保管する。

1:黄金しょうがを手に持つ農家の酒井修さん。葉の大きさも立派<br />
2:ハサミで葉茎を1本ずつ切り落としていく<br />
3:株が凸凹なので、葉茎を切り落とすのは、手作業が頼り<br />
4:残った茎の部分は、保存しているうちに自然に落ちるという

1:黄金しょうがを手に持つ農家の酒井修さん。葉の大きさも立派
2:ハサミで葉茎を1本ずつ切り落としていく
3:株が凸凹なので、葉茎を切り落とすのは、手作業が頼り
4:残った茎の部分は、保存しているうちに自然に落ちるという

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