今日では、お菓子や薬品などを中心に市場にあふれる多くの商品に、その認知効果や販売効果を高めるためのキャラクターが存在することが常識になっています。しかし、いまから半世紀以上も前、「漬物」という商品にオリジナルのキャラクターを開発し、パッケージに印刷して発売したのが「キューちゃん」の歴史の始まりです。
きゅうりのキューちゃんが生まれたのは1962年(昭和37年)。その当時、漬物は店頭の樽から小分けして販売されるのが普通でしたが、東海漬物では、衛生的で手軽に扱える小袋入りにした「きゅうりの醤油漬け」の発売をスタートさせました。その際、商品に「きゅうりのキューちゃん」というネーミングを考え、さらに「キューちゃん」という名のキャラクターまで開発してパッケージに印刷したのです。
そんな大胆な商品企画にゴーサインを出したのは、東海漬物の先代社長である大羽 至でした。大羽は、アメリカを視察旅行した際に、大量生産・大量消費を特徴とするアメリカ式の流通革命が、日本の漬物業界にも必ず起こると確信していました。大羽の柔軟な発想は的中し、「きゅうりのキューちゃん」は、今日までつづくロングセラー商品となったのです。それから半世紀を超えて、「きゅうりのキューちゃん」とともに、キャラクターの「キューちゃん」も成長を続け、今では七代目になっています。
昨年、東京・浅草で一人の芸術家が静かに息をひきとりました。彼の名は、服部 光(はっとり こう)さん。93歳まで現役で仕事を続けたグラフィックデザイナーであり漫画家でありイラストレーターでした。服部さんは、「のらくろ」で知られる田河水泡に刺激を受け、生家の酒屋を継ぎながら多彩な芸術活動に心血を注いだ作家で、その作品は一流の雑誌に数多く掲載されています。
服部 光さんの遺品整理をしていた娘さんが、半紙に丁寧に包まれた作品を開封すると、そこには何点かのキャラクターのイラストがありました。娘さん心の中に、「父は、最初のキューちゃんを描いた人」という遠い記憶があったため、東海漬物にご連絡をいただき、発見につながりました。