東海漬物
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第2回 山形県
雪がはぐくむ“カブのトウ(花茎)”
伝統野菜「雪菜のふすべ漬け」
畑から収穫せずに雪の中で越冬させたり、雪中貯蔵して出荷する野菜はあるが、雪の中で成長しながら軟白化した部分を食べる山形県置賜(おきたま)地方の伝統野菜「雪菜」は、全国でも珍しい。外側の葉っぱを栄養にしながら育った中心部の“新芽”だけを味わう贅沢品だ。
 山形県の南部に位置し、吾妻山や飯豊連峰などの山々に囲まれた置賜地方では、「雪菜」のほかに、温泉熱を利用した「小野川豆もやし」、長井市で作られる「花作大根」など、11品目が「山形おきたま伝統野菜」に認定されている。  伝統野菜の歴史は古く、藩財政の困窮を救った上杉鷹山(江戸時代中期の大名。米沢藩第九代藩主)が、冬の野菜不足の対策として栽培を 奨励したのが始まり。雪菜は米沢市の上長井地区(笹野、古志田、遠山の3地域)だけで栽培されている。
冷や汁 生の雪菜はやや甘味があるが、湯通しすることで独特の辛味成分が出る。雪菜の細胞内にある液胞にイソチオシアネートと呼ばれる辛み成分が含 まれていて、それが熱湯の刺激で現れるようだ。「ふすべ(る)」という言葉は、青菜などを熱湯処理して辛みを出したり、うま味を出したり、苦味を取る意味の方言だという。「湯の通し加減で辛みの出方が違うんです。3〜5秒くらい熱湯に浸して、それを3回繰り返してからザルに取り、ふたをして1分ちょっと蒸らすのがポイントです」
 水で余熱を取ってから、2%の塩分で漬け込み、ポリ袋などで密閉しておくと、2〜3日で辛みが出てくるという。揮発性の辛み成分なので、密閉しておかないと蒸発してしまうそうだ。 「そのまま生でサラダにして食べられますし、おひたしにしてもおいしくいただけます。でも、ワサビもカラシも入れていないのに、ふすべることで不思議と辛みが生まれてくるのです。これがいちばん魅力的なところでもあり、難しいところです」
 ふすべ漬けのほかに、「冷や汁」という置賜地方の家庭料理もいただいた。シイタケ、凍みコンニャク、打ち豆、貝柱、油揚げを中心に、貝柱とシイタケの戻し汁のだしに醤油の味付け。冬はふすべ漬け、春は茎立ち菜、秋はタケノコなど旬の食材が加わる。

育った葉は食べず、 新芽を中心に味わう

 2月初旬の立春の時期にしては米沢駅周辺の雪は少ないものの、少し車で走ると一面の銀世界が広がった。雪の下は田んぼが多いようだが、このどこかに雪菜がひっそりと埋もれていると想像しながら、上長井雪菜生産組合の佐藤了(さとる)さんを訪ねた。
「雪菜の名前が付いたのは昭和5年のことで、その前は『かぶのとう』と呼んでました。上長井地区特産の『遠山カブ』のトウを食べていたから、その名が付いたんでしょう」
じっくりと飴色に漬け込まれた、 べっこうみそ漬け  佐藤さんによると、遠山カブは洋種系のカブで、北前船で越後まで運ばれ、越後からは上杉家といっしょに米沢に伝わったそうだ。ほかに伝えられた「長岡菜」などと自然交雑を繰り返し、自家採種を続けて、土地に合うように大事に育種されてきた。現在は、雪菜生産組合が交配しないようにハウスで採種している。 「雪菜」という名称は寒冷地や雪国で栽培する葉菜類に用いられることもあり、中国大陸の江南地方の名産で雪里紅(シュエリホン、セリホン)という野菜の漬け物も知られている。
しかし、米沢市の雪菜はアブラナ科ツケナの在来品種で、ほかのものと違う野菜である。
「雪菜の場合、収穫した葉っぱは食べないですね。間引き菜はおひたしにしたり、からし和えなどで食べますが……」
 従来の葉菜類は、育った葉っぱを食べるのが一般的だが、雪菜はあくまでも新芽のトウと軟白化した部分を味わう野菜である。そして置賜地方の正月に欠かせない食材として、雪菜の「ふすべ漬け」がある。

 稲わらと土に包まれていることもあり、雪室の中は1〜2度が保たれているという。この低温状態で伸びてくる雪菜の性質が、ふすべなければ辛みが出ない特徴になったのだろうか。シャキッとした独特な歯触りと、ピリッとした辛み。ほかの地域で栽培しても、土質が違うせいか、この辛みが出ないというから、伝統的な野菜とその食べ方に感心させられる。  平成17年には、イタリアのスローフード協会国際本部から、食の世界遺産「味の箱舟」に認定された。日本で最初に認定された9品目のうち、山形からは雪菜と花作大根が選ばれている。

外側の葉を切り落とし、トウの部分を取り出す。

スコップで掘ると、 雪の中で成長した 雪菜が姿を表す。 佐藤さんに畑を案内してもらったものの、「ここが畑です」と言われても、雪原が広がるばかり。ところどころに細い棒が刺さっていて、その下に雪菜が埋もれていると教えてくれた。1.5mほど積もった雪をスコップで掘っていくと、茶色のわらと緑色の雪菜が姿を見せた。雪菜の外側の葉っぱは変色し、どろりとしている。
 「見た目は汚いでしょう。でもこの内側に食べる部分があるんです」
 株の根を包丁で切り落とし、外側の葉っぱをどんどん外していく。その手際のよさに感心しながらも、そんなに捨ててしまうのかと驚かされる。株の10%しか食べる部分がない贅沢品で、見た目も6分の1くらいになってしまった。
外側の葉を切り落とし、トウの部分を取り出す。種をまくのは8月下旬〜9月上旬の10日間。この適期を逃して早すぎると病気になるし、遅いと成育が遅れて雪が降るのに間に合わない。5日遅れても、収穫はかなり減ってしまうそうだ。  11月中旬から12月にかけて、60〜80cmに育った雪菜を収穫する。普通の菜っ葉はこれを食べたり漬け物にしたりするのだが、ここから雪菜独特の「床よせ」が始まる。根を付けたまま抜き取り、12〜13株をひとまとめにして、稲わらと土で囲い、雪が降るのを待つ。 「雪の状態によりますが、床よせしてから40〜45日でトウ立ちします。雪が降る前にみぞれが落ちてしまうと、中心部から傷んでしまいます。一気に30cmくらい積もってくれればいいんですが、去年は雪が少なくて苦労しました」
豆知識
トウ【薹】とは野菜の花のつぼみのことなんです。野菜が成長し、花が終わり種(綿毛)を飛ばす。この様子を「トウ【薹】が立つ」といい、硬くなり、若さが失われてしまうことを指します。転じて年頃が過ぎるという意味となったのです。

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