東海漬物
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第10回 徳島県
徳島の山間地で飲みつがれる漬物茶「阿波番茶」
中国や東南アジアにはお茶の葉を発酵させて食べる少数民族がいるが、
日本でも四国の山あいに発酵茶が存在している。
徳島の「阿波番茶」、高知の「碁石茶」、愛媛の「石鎚黒茶」が今も伝えられているが、
漬物にした茶葉を食べるのではなく、お湯で煮出して飲んでいる。
そのうちのひとつ、徳島県の阿波番茶の産地を訪ねてみた。

清水さんの作る「阿波ばん茶」は人気商品


  漬物茶の来た道

蒸した茶葉にカビ付けしてから漬物にしたのが「碁石茶」や「石鎚黒茶」である。碁石茶はその名の通り碁石状に固まっており、石鎚黒茶は茶葉をばらばらに仕上げる。好気性発酵と嫌気性発酵の二段階発酵が特徴で、地元ではほとんど飲まれずに、瀬戸内海方面に運ばれ、塩と交換したり売られていた。井戸に塩分が混ざる土地柄のせいか、碁石茶のように風味が強いお茶が好まれ、茶粥に使うお茶としても親しまれたようだ。

一方、ゆでた茶葉を野菜と同じように漬物にしたのが「阿波番茶」で、いずれも微生物発酵茶(後発酵茶)である。

紅茶やウーロン茶は茶葉の酵素による自己発酵(前発酵茶)で、 加熱前にカビ付けの工程が行なわれる点に違いがある(紅茶のほうが発酵度が高い)。また緑茶は発酵させないため「不発酵茶」に分類される。

お茶の新芽を刻んでゆでてそのまま食べたり、塩で味付けして食べるのは、中国の雲南省から東南アジア北部に見られるが、茶葉も一種の野草と考えればいいのだろうか。ほとんどは「食べる漬物茶」だが、ミャンマーでは阿波番茶と同じ「飲む漬物茶」がある。ミャンマーの都市部の井戸には塩分が含まれるので、四国の碁石茶が瀬戸内海で好まれたのと共通しているとの研究もある。

阿波番茶の地元には、弘法大師が茶の種を持ち帰ったという説がある。

 

「日本の棚田百選」にも選ばれた、樫原の棚田(上勝町)

四国八十八ヶ所の第二十一番札所・太龍寺に登り、潮風を防ぐ地形と深い谷の気候がお茶の栽培に向いているとして製造の秘法を授けたそうだ。

  日常的に飲まれてきた「阿波ばん茶」

「一般に『番茶』と聞くと、三番茶・四番茶で作った安いお茶のイメージがありますが、阿波番茶は無農薬で栽培して年1回収穫し、伝統的な製法で作ったお茶なんです。最近は新茶を摘んだあとの茶葉を発酵させている例もあるようですが…」

そう話すのは那賀町(旧相生町)で「阿波ばん茶」を生産・販売している清水幸助さん。一般の番茶と区別するために「ばん茶」と表記している。

7月初旬、暑い盛りに茶摘みが始まる。茶畑に案内してもらうと、山の斜面にお茶の木が無造作に生えていて、丸く刈り込まれて整列した茶畑とはまったく違う様子に驚かされる。しかも収穫は年1回なので、茶葉を枝からこそぎ取るようにして、茶摘み後はまるで枯れたように丸裸になっている。木桶で2週間近く発酵させる阿波ばん茶の場合、葉の柔らかい新芽だと溶けてしまうので、あるていど葉が固くなる夏場を待って茶摘みを行なう。

「暑いし力もいるし大変な作業なんで

すが、何十年も茶摘みをしてきた女性たちは、昔の色恋話などをしながら楽しそうにやってるんですよ。熟練した人だと1日に50kg前後を摘みますね」

収穫した茶葉はさっと洗ってから、葉が茶色に変わるまで釜でゆでる。その後、揉捻(じゅうねん)機でもんで、葉に傷を付けて発酵しやすくしておく。それを桶に入れて、足で踏み込みながら次の葉を足していく。嫌気性の発酵なのでぎっしり詰めて、いちばん上にビニールと木のふたをし、葉の重量と同じくらいの重しをのせて10日から2週間漬け込む。汁気がなくなってきたら、茶葉をゆでた汁を注ぎ足して空気に触れないように注意する。

「漬け込みが終わると、鎌を使っても掘れないくらい固くなってます。空気に触れていた表面は捨てて、機械でほぐしながら桶から出して、

大きな釜で、色が変わった茶葉を奥に押しながらゆでていく

揉捻機で茶葉をもむことで、発酵しやすくなる


踏み込みながらゆでた茶葉を足し、樽いっぱいになったところで重しをする

重しは茶葉の重量と同じくらいに。長く漬けすぎると渋みがでる


 

むしろの上で乾燥させるのです。1日でうまく乾燥させると艶が出て金色に光って見えるんですよ」

上/天日干しをすると、あたり一面にお茶のいい香りが広がる 下/茶葉を2時間ごとに返し、もみほぐしながら広げなおす

朝6時ごろから天日干しを始め、2時間おきにもみながら返していく。葉と茎が塊になって裏表で乾燥ぐあいが異なるので、特に初回は丁寧にもんでおく。雨が降ったら屋内にしまわなければいけないから、その日に干すか干さないかで、言い争いになることもあるらしい。

乾燥後は風によって選別する唐箕(とうみ)を使って葉っぱと枝を分けるが、枝だけの商品は安く手に入るうえ、味が濃くて好きという人もいるようだ。甘酸っぱい香りとさわやかな酸味が特徴で、カテキンが多く含まれているので渋味もある。ひと夏の作業を終えると、茶のゆで汁や茶渋で手足が真っ黒になるが、その苦労を忘れさせるほどの味なのかもしれない。

7月の茶摘みはかなり暑いが、女性たちはとても明るい。収穫後の枝は、枯れ木のように見える

 

上勝町に伝わるもうひとつの「阿波晩茶」

茶摘みは、充分育った葉を枝からこそげ取るように行う


 

うまみが出てくるという。

「乾燥が終わったときに茶葉の形が残っているとよくないんです。くしゃくしゃに揉まれた状態が理想ですね」

東邦大学の松原英多博士の研究によると、1日2リットルの神田茶を1週間飲んだ実験で悪玉コレステロールは2%減、善玉コレステロールは10〜25%増。
中性脂肪は30〜40%減、免疫力は30%増加したという結果が出たそうだ。
日本では四国の山中でしか作られていない貴重な漬物茶に注目したい。

ほのかな酸味があり、ホットでもアイスでもさっぱりと美味しく飲める「阿波番茶」は、健康にも良いとされる

一方、高級料亭で料理の飾りに使う「つまもの」の葉っぱビジネスで知られるようになった上勝町でも、那賀町の阿波ばん茶と同じ発酵茶が作られている。神田地区を中心に生産されていることから「神田茶(じでんちゃ)」と呼ばれ、上勝神田茶生産組合が昔ながらの製法を守っている。煎茶と違って晩夏に茶摘みをすることや、一般的な「番茶」と間違われないために「晩茶」の表記を使い始め、県下では「阿波晩茶」として定着している。

事務局の武市功さんに、那賀町の「阿波ばん茶」との違いを伺った。

「神田茶は茶色になるまでゆでずに、少し色が変わったくらいで上げます。こうすると、飲むときの色がきれいな山吹色に仕上がります。茶葉は揉捻後、冷まさずにすぐに桶に仕込みます。
足ではなく杵でしっかり突き込み、最後にバナナの葉っぱを敷き、木のふたをし

茶摘みは、充分育った葉を枝からこそげ取るように行う

て重しを乗せ、茶葉の煮汁を注いで密封します。翌日には発酵が始まってぶくぶく泡が出てきて、それを“茶の華”と呼んでいます」

漬け込む期間は同じだが、乾燥方法がまた違っている。阿波ばん茶がなるべく1日で乾燥させるのに対し、神田茶は茶葉を少し厚めに広げて2〜3日かけてじっくり乾燥させる。このほうが風味がよくなるらしい。朝6時ごろからむしろに広げ、昼ごろまでは混ぜず、切り返しは1日1回。
初日の返し方でできあがった茶葉の色合いに差がでるらしい。最後に夜露に当てると、茶葉が壊れにくく、艶がよくなり

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