東海漬物
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第7回 長野県
塩を使わずに乳酸発酵させた酸味が特徴の「すんき漬け」
長野県の木曽地方に塩を使わない珍しい漬物がある。
「すんき漬け」と呼ばれるその漬物は、
木曽御嶽山周辺で栽培されている赤かぶの葉っぱを使ったもので、
植物性の乳酸菌を豊富に含み、
最近ではアトピーなどの抗アレルギー作用があることで
注目を集めている。
 長野県を代表する漬物といえば「野沢菜漬け」だが、長野県民でも木曽地方以外の人にはあまり知られていない「すんき漬け」は、赤かぶの葉を使った無塩の乳酸醗酵食品で、すっきりとした酸味を持ち、食物繊維が豊富に含まれている。原料の成分をほとんど変化させることなく保存している全国でも珍しい無塩の漬物である。
 その昔、塩は海岸部で作られて内陸部に運ばれた。日本海側から運ばれた塩は塩尻で止まり、太平洋側から運ばれた塩も木曽に届くのはまれだったという。御嶽山の麓の王滝村・三岳村・開田村等は特に交通が不便で、「米は貸しても塩は貸すな」と伝えられたほど、塩は貴重だったのだ。
 すんき漬けの歴史は古く、約300年前の江戸時代に、藩に年貢として差し出した記録が残されている。元禄年代に俳人が「木曽の酢茎に春も暮れつつ」と詠んでいて、この「酢茎」が「すんき」に訛ったのではないかといわれている。京都には「酸茎(すぐき)」という漬物があり、塩を使っているものの、乳酸醗酵していて、すんき漬けと風味も呼び名も似ている。かつて京都から移り住んだ人が「酸茎」を元に作ったという説もあるようだ。
 平成19年、「木曽の赤かぶとすんき漬け」が国際スローフード協会の「味の箱舟」に認定(日本では15品目)。イタリアに本部を持つ同協会は、世界で消滅の危機にある希少な食材や地域における食の多様性を守ろうと同プロジェクトを進めている。
葉を刻まず長いまま漬け込んだものは 「長さら」と呼ばれる
雄大な木曽御嶽山

御嶽山の気候風土が 赤かぶを育てる
 「王滝村の空気と土が、このおいしさを作るんです。御嶽山の周りでなければだめ。自分でも作りたいと赤かぶの種を持っていく人がいるんですが、やっぱり味が違ってしまうようですね」
 そう話すのは、すんき研究会会員で「ひまわりマーケット すんきの里」代表の五味沢ミチ子さん。平成19年のすんきコンクールで「名人」に認定されている。ひまわりマーケットは平成11年秋に発足し、それまで家庭で親しまれていたすんき漬けを初めて商品化した。毎年秋から冬にかけて、「ずくを出して(精を出すという意味)」すんきを漬けている。すんき漬けは冬季限定の漬け物で、遅くとも12月には漬け込みを終えて、2月くらいまでが食べごろとのこと。
王滝かぶは、根の部分が丸く大きい
 御嶽山周辺で栽培されている赤かぶは、王滝かぶ、開田かぶ、三岳黒瀬かぶ、細島かぶ、吉野かぶ、芦島かぶの6種類。王滝村では「王滝かぶ」が栽培されている。五味沢さんたちは約60坪の畑で王滝かぶを栽培し、それを漬物に加工している。6月に種を採って、8月末に種をまくと、約2か月後には収穫できるそうだ。
 「交配しないように自家採種には気をつけています。かぶの根が、湯飲み茶碗を
伏せたような形がもっともよいので、それを選別して種用に残しています。王滝かぶはほかの地域のかぶと比べると大きいでしょ?」
 言われてみると、開田かぶは根が扁平になっていて、三岳黒瀬かぶや細島かぶは円すい型をしている。それぞれの土地に違った赤かぶが栽培されていることから、それだけ他の地域との交流が少なかったといえるのかもしれない。
ひまわりマーケットの 「すんき漬」。 シーズンの終わり には売り切れて しまうことも多い

すんきを漬けるときは 手早くやること
 「ふるさと体験館きそふくしま」で指導員をしている中村美智子さんに、すんき漬けの作り方を教えてもらった。中村さん夫妻は開田村の出身なので、開田かぶを栽培している。
 収穫したかぶは根と葉を切り離し、すんき漬けに使う葉っぱを水で洗う。長いまま漬ける場合はそのままで、刻んでから漬ける場合は2〜3cmに切っておく。
 大きな鍋にお湯をたっぷり沸かし、漬け込むための容器の底にすんきのタネ(既に出来上がったすんき漬け、前年から乾燥保存や冷凍してあったもの、ほかの家庭からもらったもの等)を入れておく。
 お湯が沸騰したらかぶの葉をさっと入れて、2〜3秒で引き上げて容器に入れる。その上にタネを入れてしっかり押さえつけ、湯通しした葉とタネを交互に重ねていき、全部の葉を漬け込んだら、葉っぱをゆでていたお湯をひたひたになるまで入れる。このとき、お湯の温度が高いと菌が死んでしまうので、45度くらいになるように調節す
ること。最後に中ぶたをして重しをして、ビニールでしっかりふたをすれば仕込みは終わり。
 翌朝になるとビニールがぱんぱんに膨らむほど醗酵するという。あとは涼しい所に置いて約1週間から10日で食べられるようになる。かぶの葉や茎がタネと同じべっこう色になっていれば完成だ。
 「すんきは昔から生活になくてはならない 開田かぶは、根の部分が扁平なのが特徴。根元の部分には乳酸菌がついているので少し残して切り離す  ものでした。寒中に桶から出して日陰に干してそれをタネとして使っていました。干したすんきは、青い野菜が収穫できるまで味噌汁に入れて飲んでいました。囲炉裏の鍋で葉をゆでて、交互に積み重ねていた母の姿を、すんきの時期になると思い出します。母がいつも手早くやれと言っていました」
@葉を水洗い。切り離した根の部分は、甘酢漬けなどに利用している A刻んでから漬ける場合は、少し残した根元の部分も一緒に刻み入れる B70度程度のお湯でさっとゆがき、しんなりさせる。湯通しは殺菌の効果もある Cゆがいた葉とタネ (既に出来上がったすんき漬け)を交互に重ねる。最後にタネを入れたらゆで汁をヒタヒタになるまで注ぎ、空気を抜きながらビニールの口をふさぐ。保温のために新聞紙をつめ、フタをして漬け込み完了
 長いまま漬けたものを桶から出すとき、表面が凍っているので取りに行くのが嫌だったそうだ。切ってから漬ける人が増えたのは、そのまま味噌汁に入れたり料理にするのが便利だからだろう。ただし風味は、長いまま漬けたほうがおいしいという。

すんき漬けの 新しい試み
タネやスターターの種類によって、出来上がりの味が異なる
 中村さんの家では、最近開発されたすんき漬けの「スターター」を使ったものを食べさせてもらった。木曽すんき研究会と大学が共同研究して試作したもので、すんき漬けをだれでも失敗なく作れるようにするためのタネの役割を果たすものだ。すんき漬けの主要な4種類の菌を粉末や液体にし
てあるので、前年からのタネがなくても気軽に作ることができる。
 「スターターだけで作ると、酸味がもの足りないので、自家製のすんきを混ぜたりと、いろいろと試行錯誤中です」
 スターターで作ったすんきを元に3代くらい作ると、従来のすんきと同じ味になるそうだ。
 木曽の伝統食品で長野県の味の文化財でもある「すんき漬け」の技術と味を継承するために発足した「木曽すんき研究会」は、木曽農業改良普及センターと共同で平成7年から毎年「すんきコンクール」を開催、平成20年には東京農業大学で同大や木曽町商工会などとの共催で「すんきシンポジウム」を開いた。
 事務局長の野口廣子さんによると、無塩の醗酵食品でその健康機能性にも注目されているので、すんき漬けを使ったふりかけが作れないか考えているとのこと。また夏のかぶ菜ですんき漬けを作ると苦味や渋味が出てしまうが、そういうものを加工品として活用できないかと思っているそうだ。
 すんき漬けは無塩なので、どんな料理にも合うという。なかでも温かいそばに刻んだすんきをのせた「すんきそば」は、木曽の冬を代表する味だ。このほか、チーズと合わせてピザにしたり、クリーム煮にしてもよい。一方、つけ汁はお酢と同じように使えるので、ドレッシングに使ったり、うどんの汁に加えたりしてもよい。工夫しだいでいろいろな食べ方があるすんき漬けは、一度食べると忘れられない郷土の味だった。
木曽の冬の風物詩「すんきそば」

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