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第13回 石川県

能登半島に伝わる「中島菜漬」と
「いしり」を使った郷土料理

能登半島の沖あいは対馬暖流とリマン寒流がぶつかりあう好漁場だが、 輪島などの外浦は波が荒く、漁に出られる日が少ない。 一方の富山湾に面する内浦は静かな海が広がり、 豊富な魚介類や海藻類が採れる。 旧中島町で食べ継がれてきた「中島菜漬」のほか、 能登半島には海産物を利用した珍味も多い。 この地域に古くから伝わる家庭の味が、注目を集めている。

「中島菜漬け」画像

能登伝統野菜のひとつ「中島菜」は、
ほとんどが石川県内で消費される。


血圧の上昇を抑えるという能登野菜・中島菜

農薬や化学肥料を使わない有機農法で育てられた中島菜

中島菜はアブラナ科の仲間で、葉がギザギザになっていて、独特のほろ苦さと辛みがある。ビタミンCとカルシウムを豊富に含み、血圧上昇に作用する「アンジオテンシン(ACE)」という酵素の働きを抑える成分

農薬や化学肥料を使わない有機農法で育てられた中島菜

血圧の上昇を抑えるという能登野菜・中島菜

が青葉のなかで最も多く含まれることで注目されている。

中島町北部の西谷内地区の「七草会」では、中島菜の漬物を製造販売している。近隣の農家から中島菜を買い付け、水洗いしてから二晩塩に漬け込むだけ。着色料や保存料は使っていない。

「最近はほかの地域でも作っていますが、昔は中島市から外に出すなといわれていたほど地域に根ざした野菜でした。粘土質の土壌が向いているのか、熊木川流域で作った中島菜がおいしいんですよ」

七草会代表の山岸由紀栄さんによると、山を越えて違う地域で栽培しても、味や香りがなくなってしまうらしい。そのような理由から、長年にわたって自家採種され、町内だけで消費されてきた。今はJAが交配しないような畑で採種している。

夏に種まきして秋に収穫してしまう場合もあるが、七草会では9月下旬に種をまき、10cmくらいに育ったころに間引きを行なう。種まきの時期が早いと虫にやられたり、収穫時期に大きくなりすぎてしまう。昔は野沢菜のように大きく育ったものを漬けていたが、固くて食べにくかったという。おいしい漬物にするには、30cmくらいがちょうどいいそうだ。


気候風土が育んだ中島菜漬

初雪が降る12月ごろから収穫開始。よく「霜に当たると野菜の甘味が出る」といわれるが、中島菜も同じように、雪国の厳しい自然の恩恵を受けているのかもしれない。中島菜を作る農家のおばあちゃんは「だんだん甘味が増してきて、3月ごろがいちばんおいしい」と話す。

収穫した中島菜は、丁寧に水洗いされ、塩分濃度4%で漬け込む。寒い時期は葉や茎が固くなるので、強めの重しで早めに水あげする。この状態で二晩置き、手でもんでアクを出す。こうすると、色合いがきれいな緑色になり、香りや食感もよくなるのだ。塩漬けしてから4日くらいまでが食べごろ。1週間以上経つと色が茶色くなって味が落ちてしまうので、冷凍保存しておくといい。中島菜漬は全国発送が可能で、12月から4月ごろ(冷凍したものは夏ごろ)までの期間限定販売。在庫がなくなり次第終了する。

“気候風土が育んだ中島菜漬

株の間の土をよく落とす ために3回ほど水をかえ、丁寧に洗う 容器にすき間なく並べて塩をふりながら重ね、重しをして二晩置く

ほろ苦く、辛みのある味が特長の「中島菜漬」

食べてみると、ほんのりとしたぬめりがあり、菜の花のような苦味を感じる。ギザギザの葉の食感もあり、味わい深い。どこの漬物も同じだが、昔はもっと塩分が濃かったらしい。おばあちゃんたちによると、菜飯にして白ゴマをまぶしたおにぎりがおすすめ。生の葉は、醤油をかけたり、みそ汁の具に入れたり、油揚げと煮付けたりして食べる。

中島菜は、重しが軽いと花が咲いてくるほどの生命力があるそうだ。それはまるで、地理的に不便なうえ、厳しい環境に暮らす、能登の人たちの姿のようだった。


民宿さんなみの「食治(しょくじ)」

能登町にある郷土料理の宿さんなみは、1日3組しか泊まれないこともあり、常に予約で埋まっている。周囲に観光するような場所はほとんどないが、この宿の魅力はなんといってもその「食治」にある。

「温泉の『湯治』があるように、食事で同じことができないかと思ったのです。旬の食材を使った伝統料理を食べていただき、健康になってほしいと思っています。金沢では豪華な加賀料理が有名ですが、能登は素朴な保存食が多いんですよ」

そう話すのは、さんなみのご主人・船下智宏さん。明治生まれの船下さんの母は、農薬や化学肥料がない時代に田畑を鍬(くわ)で

「さんなみ」で漬けられた多彩な漬物

民宿さんなみの「食治(しょくじ)」

耕していた。毎日食べるものは、安全な旬の食材ばかり。「私の舌が当時の味を覚えているのです」と、船下さんは昔ながらの郷土料理を同じようにお客さんに提供している。海に行って海藻を採り、山菜やキノコのシーズンには山を歩く。田んぼではお米を、畑では野菜を、もちろん無農薬で育てている。

刺し身や焼き魚は素材が新鮮ならおいしいのは当たり前。さんなみの魅力はなんといっても手をかけた料理である。なかでも漬物の種類が豊富で、地下の食料庫を拝見すると、その種類の多さに驚かされる。
 まず最初に宿に着いていただいたのが、

「さんなみ」で漬けられた多彩な漬物

渋柿のしぶを塩で抜いた「柿漬け」はサクっとした歯ざわり

「さんなみ」で漬けられた多彩な漬物

たくあんは、干し柿を作った際に出た皮と共に漬けることで独特の甘みがつく

漬物や保存食がずらりと並ぶ食料庫

残った漬物を一緒にし、一度洗ってから塩を足して漬けた「からもん」

「べん漬け」と呼ばれる いしりで漬けた大根。焼くと香ばしさが増す

渋柿を海水に漬けた「柿漬け」だった。ちょうど漬けてから1か月ほどらしく、ほんのりとした塩味に柿の甘味がキリッと加わり、お茶請けにぴったりだった。もっと期間が経つと塩分が濃くなるので、ご飯のおかずとして食べるそうだ。

さまざまな野菜を塩辛く漬けて合わせた「からもん」、イワシを糠漬けにした「こんかいわし」などは、ほんの少しでご飯が進むおかずである。さんなみの「こんかいわし」は2〜3年熟成させるので、糠とイワシが一体化して濃厚なクリームチーズ状になっている。


滋味豊かな「いしり」料理

醤油や味噌などの調味料は能登町で伝統的に作っているところから仕入れるが、奥能登地方に古くから伝わるイカと塩だけで作る魚醤「いしり」は自家製である。いしりはタイのナンプラーや秋田のしょっつると同じ魚醤だが、能登ではイカの内蔵が使われている。イカの内蔵と塩を交互に重ねて桶に仕込み、2年寝かせると完成。

手前:いしりで漬けた「べん漬け」 奥:濃厚な味わいの「こんかいわし」

船下さんによると、魚を使ったものは「よしり」と呼んで区別している。「いしり」はイカの汁がなまったものだが、「よしり」の「よ」は魚のことを指すらしい。

いしりの貝焼きやいしり鍋も人気だが、天日干しした自

滋味豊かな「いしり」料理

井戸端で焼かれる海餅(かいべい)にもいしりが使われている

家製コシヒカリにイカといしりを加えて炊きあげ、はんつきにして竹串に刺して囲炉裏で焼いて食べる「海餅(かいべい)」は、さんなみのオリジナルメニ

ューである。秋田のきりたんぽの食感にイカの風味が加わり、炭火の香ばしさが食欲をそそる。

また、いしりで漬けた「べん漬け」は、能登にしかない漬物だろう。興味深いのは、べん漬けの大根を炭火であぶって食べる風習だ。焼くことで香ばしさが出て塩気がやわらぎ、ほんのり甘く歯ごたえが増す。

能登半島最北端

漬物をあぶって食べる地域はかなり珍しいが、岐阜県の飛騨地方では凍ってしまった漬物を朴葉(ほうば)にのせて囲炉裏の火で焼く習慣があったようだ。

「珠洲市・輪島市・鳳珠郡(能登町、穴水町)のそれぞれで食文化が違っています。同じ鳳珠郡でも、昔は穴水町にいしりはありませんでした。この土地にしかないものがいくつあるかで、価値が出ると思っています。自然に支えられた食生活を大事にしたいし、それを残して伝えていきたいのです」

漬物をはじめとする保存食は、冷蔵庫や冷凍庫がなかった時代に、食材をムダにしないで食べる知恵から生まれた。日本海に突き出た能登半島の先端に、本物の郷土料理が残されていた。


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