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第37回 広島県【太田川の中州で発展した日本三大菜漬け「広島菜漬」】 広島の「広島菜漬」は、九州の高菜、信州の野沢菜と並ぶ三大菜漬けのひとつだが、実は広島県以外ではあまり知られていない。地元スーパーの漬け物コーナーには、広島菜の浅漬けのほか、瀬戸内産のレモンと合わせたり、キムチと混ぜるなど、広島菜のアレンジ商品も数多く並ぶ。主に広島で消費されている“ご当地漬け物”の魅力に迫る。

猫島商店の贈答用広島菜漬。 「江戸時代の参勤交代のときに、京都から種子を持ち帰ったのが始まりと言われています。『京菜(きょうな)』と呼んでいる年配の人も多く、京都の『壬生菜(みぶな)』がルーツなのかもしれません」
 また、JA広島市営農販売部副部長(広島菜漬センター総合所長)の秦卓司さんによると、昭和8年に広島県産業奨励館(今の原爆ドーム)で広島菜が展示され、そのときに「命名式」が行なわれ、広島を代表する漬け菜として認知されるようになったそうだ。
 「広島に原爆が落とされたことで、農家の働き手だった男衆が亡くなり、残された妻子と高齢の両親たちが、生きていくために広島菜の栽培に力を注いだという経緯もあるんですよ」(秦さん)
 JA広島市が契約栽培している農家は、約60軒。以前は100軒近くあり、広島菜漬にして販売していた農家も多かった。

広島の歴史と共に歩んできた「広島菜漬」とは?

 広島菜はアブラナ科に属する野菜で、白菜の一種といわれている。1株が50〜60cm、2〜3kgに達するほど大きく育ち、葉は緑色が鮮明、幅広で肉厚、白菜のように結球しない。生食での利用はほとんどないが、浅漬けにすると歯切れがよく、ほんのりとした辛し風味が好まれている。
 中国山地から瀬戸内海に流れる広島菜は、葉が横に開く品種と、まっすぐに育つ品種がある。
太田川流域(広島市安佐南区の川内地区)で、広島菜は栽培されてきた。川内地区は太田川の中州にあり、ときどき氾濫して肥沃な土地になった経緯から、水はけも良く、野菜づくりの適地としても知られている。
 昔、広島には陸軍、隣の呉市にも海軍の基地があったことから、川内地区がその食料生産を担ったが、兵隊さんが食べるものだけあればよかったことから、これといった特産品がなかったという。地元では「川内から嫁をもらうのはいいが、嫁には出すな」と言われるほど、農家は大変だったようだ。
 昭和3年に川内で創業した「猫島商店」は、漬け物全般を扱うなかで、広島菜漬を中心に製造販売してきた。常務取締役の猫島泰伸さんは、広島菜の歴史を次のように説明する。
10月9日に畑に定植しました。種蒔きの時期に台風が来ると被害が大きいので、確実に育てるために苗をつくる方法にしました。追肥を1度行ない、60〜70日後に収穫します。今は露地とハウスを合わせて、13アールで広島菜を栽培しています」
 広島菜の種はそれぞれの農家が自家採種しているようだ。板尾農園では、葉が大きく開き、濃い緑色をしていて、株の張りがいいものを残して、種を採っている。ところが、全部優等生にするとうまく育たないらしく、少し白菜と交配したようなものを混ぜて採種したり、昨年の種と今年の種を混ぜて種を蒔いているそうだ。
 広島菜には、大きく分けて葉が横に開く品種と、株全体がまっすぐ立つ品種がある。それぞれ農家の名前でいくつかの系統があり、今は特徴的な4系統が残されている。どちらかというと、葉が開く品種のほうが葉っぱが柔らかいという。

肥沃な土地で育つ一方、気候に左右される“神経質”な野菜

「板尾農園」では、JA広島市に出荷するほかに、自家製の広島菜漬も製造販売している。1株が50〜60cm、2〜3kgに達するほど大きく育つ。 JA広島市が広島菜の栽培を委託している農家のひとつ「板尾農園」でも、JA広島市に出荷するほかに、自家製の漬け物を製造販売している。昭和34年に父が始めた農園を、息子の板尾弘幸さんが受け継いだのは、2年ほど前のこと。今は妻の朋子さんと二人で切り盛りしている。
 「今年は天候不順で、暑かったり、雨が多かったり、成育の大事なときに台風が来たりして、収穫が1割くらい落ちてます。
露地栽培の収穫は10月下旬から1月末まで。畑に霜が1〜2回降りると糖度が増しておいしくなりますね」
 広島菜は適温範囲が狭く、一般の野菜なら耐えられる寒暖の範囲でも、うまく育たなかったり、虫害が出たり、病気になってしまう。板尾さんは、露地に種を直蒔きしていたが、3年前から苗をつくって定植するように変えたという。
 「今年は9月20日に種を蒔いて、
荒漬けは、束のままの広島菜に塩を振りながらタンクに重ねて丸一日漬ける。荒漬けのあと、手洗いで丁寧に洗浄する。JAでは井戸水を使っている。中漬けのタンクに入れて塩をふり、更に丸一日漬けたあと、再び洗浄する。中漬けでは、硬い芯まできちんと漬かるように葉の間に塩をまぶす。

塩だけで漬けた、あっさりした味が特徴

 猫島商店、板尾農園、JA広島市とそれぞれ少しずつ漬け方が異なるが、JA広島市では次の手順で広島菜漬をつくっている。まず、入荷した5株を束のままタンクに入れて荒漬けを行なう。1トンの広島菜に対して、5%の塩水と25kgの塩を振りながら重ね、1.5〜2倍の重しを載せて、丸一日漬ける。
 次に株の根元を切り落とし、曝気洗浄後、手洗いで洗浄を行なってから、中漬けする。
 「中漬けのときに、葉の間にも塩をまぶします。芯が硬いので、中に塩を入れることできちんと漬かるようにしているのです。漬物屋さんによっては、芯に切れ目をいれるところもあるようです」
 そうやって、塩を振りながらタンクに重ねて丸一日漬ける。
昔は製品時で塩分が5%くらいだったそうだが、今は約3%で仕上がるようにしているそうだ。荒漬け後に850kg、中漬け後に700kgくらいにかさが減り、最終的に600kgくらいになる。
 その後、また葉を開きながら丁寧に手で洗浄する。広島菜は白菜と違って葉が開いて育つので、小さな草や、わらなどが入りやすいからだ。洗浄後、塩水にくぐらせてから袋詰めをして、調味液を加えて包装して完成。
 さっぱりした塩漬けで、辛味があるほうが喜ばれる。昔は6か月以上漬けた「本漬け」が主流で、アメ色になっていたそうだ。浅漬けの賞味期限は2週間だが、塩を足して古漬けにしたり、すっぱくなるまで置いてから食べるという人もいる。
樽で仕入れるために、提供するうちに時間が経って本漬けになったそうだ。
 また、広島市の江波(えば)地区は海苔の産地で、昔は海苔業者が900軒ほどあった。この地域には「江波巻き」と呼ばれる太巻きがあり、漁師の船上食として考案されたという。広島菜漬と鰹節を醤油とゴマで和えたものを芯にして、穴が開いたり、欠けたりした海苔で巻いたものだ。太巻きのように刻んだ広島菜漬を具にしてもいいし、葉っぱでおにぎりを包んでもいいだろう。広島菜漬の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい。板尾農園でつくっていただいた料理。左/広島菜漬の葉でご飯を包んだ寿司。 中/広島菜漬。おひたしのように見える。右/広島菜漬を刻んで明太子とマヨネーズを和えたもの。

カキや海苔など、海産物との相性もいい

板尾農園では、本漬けのときに唐辛子と昆布を加えている。 広島菜は、野沢菜や高菜と違って葉が柔らかいので、3cmくらいの長さに切って、葉1枚を広げて、海苔と同じようにご飯を巻いて食べるのも好まれている。
 「野沢菜のように、外食産業で広島菜が出ることはまだ少ないのですが、最近は握り寿司のネタに使ってくれる店もあるんですよ。
醤油で味つけした鰹節をシャリの上に載せて、その上に広島菜漬を置いて玉子握りみたいに海苔で巻いてあります。広島菜漬の調味液には昆布エキスを入れているので、鰹節と合わせると相乗効果でおいしくなるのかもしれません。また、鰹節と醤油のおかげで酸味がまろやかになって食べやすくなります」(猫島さん)
 広島には、川辺に留めた和船でカキ料理を食べさせる「カキ船」があり、
カキ飯・カキの土手鍋・酢ガキ・カキの吸い物などが味わえる。昭和初期には150隻以上あったらしく、付け合わせとして広島菜漬も出されていた。

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