蒸し暑さの残る9月中旬、京都市街から車を走らせることおよそ 1時間半、小さな里山「花脊(はなせ)」にその料理旅館はある。
『美山荘』は、明治28年(1895年)、大悲山峰定寺に参詣する信者のための宿坊としてはじまった。昭和32年(1957年)には三代目当主である中東吉次氏が、地元の草花や山菜、魚などをつかった「摘草料理」を提唱、花脊に息づく自然の恵みで客人をもてなす料理旅館に生まれ変わった。現当主である四代目、中東久人さんはアメリカとフランスに留学後、パリにてギャルソンとしてキャリアを積み、金沢の料亭で日本料理の修行を積んできた。レストランのプロデュースや寿司チェーンの商品開発といった新しい試みを交えつつ、摘草料理に込められた先代の想いを継ぎながら、京都の奥座敷から日本伝統の食文化を発信し続けている。
そんな美山荘における、しば漬けとは――。