しょうがは比較的温暖な地域で栽培され、福島県以北ではあまり栽培されていない。全国の収穫量約5万4000トンのうち4割以上が高知県で収穫されている。県内でも、四万十川の源流域・四万十町にしょうが畑が多い。明け方に霧に包まれ、適度な湿度が保たれる環境が、しょうが栽培に適しているようだ。
10月20日には、四万十町の道の駅あぐり窪川で「第1回しまんと生姜収穫祭」が開催された。同町にある「ホテル松葉川温泉」では、月1回限定で地域特産のしょうがを使った「しょうが風呂」に入ることもできる。
各地で伝え育まれてきた漬物を訪ね歩く
取材時期:2013年11月
数年前から、しょうがが注目されている。とくに寒い冬に体を温める食材として、ドリンクやスープなどしょうがを加えた食品が増え、しょうが料理のレシピ本が何冊も発売され、しょうが料理専門店も登場している。国内のしょうが生産の半分近くは、高知県で栽培されているという。しょうがの本場で、国産しょうがの魅力に迫った。
しょうがは比較的温暖な地域で栽培され、福島県以北ではあまり栽培されていない。全国の収穫量約5万4000トンのうち4割以上が高知県で収穫されている。県内でも、四万十川の源流域・四万十町にしょうが畑が多い。明け方に霧に包まれ、適度な湿度が保たれる環境が、しょうが栽培に適しているようだ。
10月20日には、四万十町の道の駅あぐり窪川で「第1回しまんと生姜収穫祭」が開催された。同町にある「ホテル松葉川温泉」では、月1回限定で地域特産のしょうがを使った「しょうが風呂」に入ることもできる。
日本で栽培されるしょうがの品種は、根茎の大きさから「大しょうが」「中しょうが」「小しょうが」に分類される。関東では小しょうがと中しょうが、西日本では大しょうがが主に栽培されている。
ひと株で1kg前後に生育する「大しょうが」は、晩生で茎や葉が大きく育ち、根が大きな株になるのが特徴。長崎の島原半島の農家が、タイから種しょうがを買ってきて植えたのが始まりだといわれている。
「私たちが品種改良した『黄金(こがね)しょうが』は、大しょうがと中しょうがの間の中太種です。色鮮やかな黄金色が特徴で、繊維が少なくおろしやすく、しかも退色しにくいんです」
そう話すのは、坂田信夫商店の清藤(きよとう)浩文専務。1947年に創業し、しょうが作り65年以上の実績を誇る。1985年に開発した黄金しょうがは、しょうがの成長点を培養して、数年かけて品種改良したそうだ。従来の国産大しょうがや中国産のしょうがと比べて、辛味成分の「ジンゲロール」、香りの成分「ショウガオール」が、多く含まれている。
しょうが栽培のスタートは、収穫を終えた12月から始まる。水はけをよくするために、直径15cmくらいのパイプを使って、機械で深さ2mくらいの穴を開けるそうだ。その後、サトウキビの搾りかすを堆肥としてふりまき、2月ごろにしょうがが育つのに必要な肥料を施す。
3月にトラクターで耕して肥料と土をよく混ぜてから、畝を立てる。
種しょうがを植え付けるのは4月ごろ。深さ20cm前後に、20〜30cm間隔で植えていく。芽が出る方向を上に向けると真っすぐ発芽するので、熟練した人が手作業で植え付けていく。
5町4反のしょうが畑を管理するのは、しょうが農家の酒井修さん。栽培でいちばん気をつけるところを伺った。
「やっぱり水管理ですね。水が溜まると病気が広まるのが早いので、最初の穴開けが重要です。病原菌は、雨が降ると流れて畑全体に広がってしまうので、常に見回りして、病気の株を1〜2本見つけたら隔離します」
発芽してからは、雑草との闘いだという。放置しておくとしょうがより先に草が茂ってしまうが、除草剤を使わないので早めに手で抜いていく。7月ごろになれば、しょうがが大きく育つので、しょうがの葉で土の部分が日影になり、草に負けることはない。
収穫時期は、10月中旬から下旬にかけて。 しょうがは熱帯性の植物なので、畑に霜が下りるまでに収穫する。葉を根元から切り落としてから、土がついたまま冷蔵庫で保管する。
坂田信夫商店の清藤さんに、収穫したばかりのしょうがで漬物を作ってもらった。定番の「ガリしょうが」は、まず最初にしょうがを小さな房に切り分ける。水洗いしたあとで、包丁やスプーンを使って皮を落とし、スライサーで1〜2㎜に薄く切る。沸騰したお湯にスライスしたしょうがを入れ、1分以上加熱して殺菌する。その後、水洗いしてえぐみを洗い落とし、しっかり水切りしたあとで、
熱湯消毒した容器に入れて、しょうがが完全に隠れる程度に調味液を加える。市販の甘酢やらっきょう酢を使ってもいいし、お酢に砂糖を加えて、隠し味に塩を入れて自作してもよい。
「醸造酢ではなく、穀物酢を使うと味がまろやかになります。逆に、ツンとしたのが好きな人は醸造酢がいいですね。ゆず酢を使って風味をつけることもできますし、はちみつや黒糖で甘みをつけてもいいでしょう」
容器に漬け込んだら一晩で食べられるという。冷蔵庫に入れれば2〜3週間は保存できる。
もうひとつ教えてくれたのが「おかずしょうが」と呼ばれるもの。「ガリしょうが」の作り方でスライスするところまでは同じで、そのあとでみじん切りにする。沸騰したお湯に通してから流水でえぐみを取り、今度は「白だし」などの調味液を鍋で温めて、そこに刻んだしょうがを加えて、5分くらい煮つめたら出来上がり。冷ましてから容器に移し、冷蔵庫で保存する。
「市販の白だしを使うと簡単にできます。しょうが300gに対して、調味液は300cc。1対1の割合です。これも醤油漬けの一種かもしれません。おかずしょうがは、そのままご飯にのせて食べてもいいし、鰹節を混ぜてもおいしいですよ」
おかずしょうがは、収穫直後の新しょうがだけでなく、通年手に入るものでもおいしくできるそうだ。玉子焼きに混ぜたり、玉子かけご飯に醤油代わりに載せて食べるのもおいしい。
しょうがの利用方法には、香辛料や薬味として、生薬や漢方として、凝固剤として、食材として、それぞれの利用方法がある。いちばん親しまれているのは薬味としての利用だが、冷やっこの上にしょうがを載せてから醤油をかけると、醤油の揮発成分でしょうがの香りが飛んでしまうそうだ。豆腐に醤油をかけてから、最後にしょうがを載せて食べるのが正しい作法なのだ。
「しょうがは臭みとりの効果もあるので、サバの味噌煮などには欠かせません。免疫力を高めるなら、生で食べたほうがいいです。逆に体を温めたい場合は、加熱したほうがいいでしょう。
黄金しょうがは、そのまますりおろしてお湯を入れるだけでおいしいですよ」
実際には中国産のしょうがのほうが手に入りやすいが、中国産しょうがと国産しょうがを比べると、風味がぜんぜん違うことに驚く。中国では炒め物に使うことが多いので、辛味が中心の品種が多い。逆に日本は生で食べることが目的なので、香りと風味がよい特徴がある。漬物としても、食材としても、もっと国産しょうがを利用したい。
※取材記事は漬物文化の啓発活動であり、販売目的ではございません。
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※掲載内容は取材時の情報です。