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全国漬物探訪

第20回 韓国・後編

 ソウルと全州を訪ねた前編に続き、韓国のキムチ事情の後編では、南東部に位置する慶尚南道(キョンサンナムド)を紹介する。なかでも、周囲の海がきれいなことで知られる南海島に足を運び、韓国北部と南部の違いを明らかにしたい。「食は全州にあり」といわれる地域でのキムチと比べて、海に面する南部の島では、どのようなキムチが漬けられているのだろうか?

南海の一般家庭でのキムチづくり。近所の奥様たちが集まり、おしゃべりしながらも手は休まないのはさすが

 慶尚南道にある南海島は、釜山か高速バスで約3時間の距離にある。今は島々が橋で結ばれていて、そのまま車で周遊できるが、以前は三千浦(サンチョンポ)と呼ばれる町からフェリーで渡っていたそうだ。

 早朝、三千浦の漁港に隣接する市場を訪ねた。ソウルの市場と比べると海苔や海藻の種類が多く、煮干しの専門店には大小さまざまな種類が並んでいる。軒先に干しダラがぶら下がっていたり、干物を作っている店もあった。

 港に面した路地には海産物を扱う露店が続く。15年くらい前に韓国を訪ねたときは、釜山のチャガルチ市場もこんな雰囲気だったが、観光客向けのビルができてからは、すっかり様子が変わってしまった。三千浦の漁港には、かつての活気が残されていてうれしくなった。

海からホースで海水を汲み上げた、天然のいけす

 アジュモニ(おばさん)たちが扱っている魚介類はどの店も似ているが、なかでも貝の種類が豊富だった。よく見ると海からホースで汲み上げた海水をたらいに注いでいる。いわば、天然のいけすになっているのである。

 三千浦の名物でもあるポッチゲ(フグちり)を味わったあと、橋を渡って南海島へ渡る。イワシを追い込むいけすがあり、天然のカキも水揚げできるという。

 「南海は、海の水がきれいな地域として国内でも有名なんです。そのままめるくらいなんですよ」

 今回の旅のコーディネーターのチョン・キョンスクさんはそう説明する。海がきれいなのは海流の影響もあるのだろう。南海産の魚介類はいちばんおいしいと言われ、ソウルでは「南海の魚」としてブランドになっている。このほか、潮風がミネラルを運んでいるため、大根など野菜の甘味が強いらしい。

漁港に隣接する市場では、海苔や海藻など、魚介類の豊富さが目を引く

魚介から山菜まで、さまざまなキムチがある

 慶尚道(キョンサンド)は、東や南の海から新鮮な魚介類と海藻が水揚げされ、山地からは香り高い山菜が容易に入手できる。豊富な材料で作った料理はピリ辛でしょっぱいものの、その中にうまみが広がる。塩辛の種類は全羅道に次いで多い。全羅北道(チョルラブクド)の全州(チョンジュ)で食べたキムチはアミの塩辛の風味が強かったが、慶尚道ではイワシの塩辛を多用する傾向があるようだ。

 黄土のレンガを使ったスッカマ(炭釜)サウナを併設する温泉を経営するパク・チョンゴンさんを訪ね、キムチづくりを教わった。魚介類を使ったキムチ(ソッバッチ)は短冊に切った大根と漬けるのが基本で、南海にはほかの地域では作らない生ガキのキムチがある。新鮮な生ガキに、大根・細ネギ・ゴマ・唐辛子粉・塩を和えてある。これは作ってから数日で食べきるそうだ。ほかにウナギのキムチは、生エビ・イワシ・昆布だし・梨・イワシ醤油を和えて作る。

 野菜のキムチにも珍しいものがあった。ニンニクの産地であることから、ニンニクの穂を唐辛子味噌に漬けてキムチにしたもので、ご飯のおかずに最適とのこと。タンポポの仲間であるコドゥルペギ(イヌヤクシソウ)を漬けたものは、血をきれいにする(肝臓に良い)そうで、苦みが特徴。前編で訪ねた全州でも有名な薬草だという

上:カキが入ったキムチ(クルギムチ)<br />
下:ニンニクの穂のキムチ(マヌルチョンヂ)

上:カキが入ったキムチ(クルギムチ)
下:ニンニクの穂のキムチ(マヌルチョンヂ)

地域の特徴と創作性が高いキムチ

 パク・チョンゴンさんの妻ソ・ヂョンアさんはベジタリアン。そのためキムチづくりにも独自の工夫がこらされている。アミの塩辛やイワシ醤油を加えたもののほかに、玉ねぎやニンニクも使わない精進キムチを仕込んでいる。味見させてもらったら、さっぱりしたシンプルな味わいだった。

 海がきれいな南海でしか見られないのが、海水による塩漬けである。海から汲んできた海水をそのまま使い、白菜を洗うようにかける。葉の間に塩を振り、海水でひたひたにした状態で6~7時間置いておく。このとき重しはしない。

 1日目に塩漬けを行ない、2日目に一晩かけて自然に水が切れるようにする。繊維がつぶれるため絶対に手で絞ってはいけないとのこと。そして、3日目にヤンニョムを行なう。

左:白菜の塩漬け。半割にした白菜に、近くの海から汲んできた海水をくぐらせる<br />
右:葉の間に天然塩をふり、6~7時間おく。その後の水切りを含め、下漬けには2日かかる

左:白菜の塩漬け。半割にした白菜に、近くの海から汲んできた海水をくぐらせる
右:葉の間に天然塩をふり、6~7時間おく。その後の水切りを含め、下漬けには2日かかる

 ヤンニョム(薬念)のベースになるのは、煮干しだしにもち米の粉を溶かしたもの。ソ・ヂョンアさんはここにカボチャとタマネギの煮汁、昆布だしを加えている。こうするとマイルドに仕上がる。もち米の粉を溶かしたベースになる汁に、唐辛子粉、自家製イワシ醤油、高菜、ノビル、梨のすりおろし、ニンジンの千切り、ニンニクのすりおろし、半ずりにしたゴマ、ショウガのすりおろしなどを加えていく。最後に、たたいて細かくした海藻、水あめ、玉ねぎのすりおろしを混ぜて完成。水分が出てしまうので、大根の切りは入れない。ヂョンアさんはまったく使わなかったが、南部では水が出るのが嫌われ、大根を入れる人は少ない。

 「キムチを漬け込んだら、最後に炭を差し込んでおきます。こうすると嫌な匂いが出ないのです。スッカマ(炭釜)サウナで樫の木の炭を使っているので活用しています」

 黄土を利用したスッカマ、樫の木の炭、そこに集まる人たちが三位一体となって、独創的でおいしいキムチが作られていた。

 なかでも味の決め手になっているのが自家製イワシ醤油だった。イワシと塩をベースに、キウイフルーツを加えて、水を入れずに1年以上漬け込む。そして染み出た上澄み液が魚醤になる。下に残ったものはイワシの塩辛として食べる。キウイは一般には入れないが、ベジタリアンであるソ・ヂョンアさんの工夫らしい。

1:ヤンニョムのベースに野菜のス―プを入れるのは、「身体に良いから」<br />
2:とろみが出るまで煮て、あら熱を取ったら唐辛子粉、イワシ醤油を入れてよく混ぜる<br />
3:梨はすりおろして入れる。大根は水がでてしまうので入れない<br />
4:高菜、ノビル、ニンジンなど、たっぷりの野菜と、ニンニク、ゴマ、ショウガ<br />
5:たたいて細かくした海藻を入れるのは、海に面した土地ならでは<br />
6:水あめ、玉ねぎのすりおろしを混ぜて、工夫をこらしたヤンニョムの完成

1:ヤンニョムのベースに野菜のス―プを入れるのは、「身体に良いから」
2:とろみが出るまで煮て、あら熱を取ったら唐辛子粉、イワシ醤油を入れてよく混ぜる
3:梨はすりおろして入れる。大根は水がでてしまうので入れない
4:高菜、ノビル、ニンジンなど、たっぷりの野菜と、ニンニク、ゴマ、ショウガ
5:たたいて細かくした海藻を入れるのは、海に面した土地ならでは
6:水あめ、玉ねぎのすりおろしを混ぜて、工夫をこらしたヤンニョムの完成

漬け込みの最後に、スッカマ(炭釜)で使用している炭を入れる。炭には匂いや腐敗を防ぐ働きがある

漬け込みの最後に、スッカマ(炭釜)で使用している炭を入れる。炭には匂いや腐敗を防ぐ働きがある

朝鮮半島のキムチに見る地域性

 日本では「一汁三菜」のように汁とおかずの数で献立を考えるが、韓国では汁とキムチは献立に数えず、あるのが当たり前。最近は伝統的な作り方のキムチよりもリッチな味を好むようになったが、若い人でも食事の基本にキムチがあることに変わりはない。

 韓国のキムチの地域差を考えると、南部は海が近いため、イカ・アミ・イワシなどの塩辛が欠かせない。西南地方では生のアミやカキを加えるという。南に行くほど辛さが強くなり、汁気が少なく濃厚な風味になる。北部と比べて気温が高くなることと、魚介類が加わるので、保存のために塩と唐辛子がふんだんに使われるのだろう。新鮮な魚介類だけでなく、キムチに必要な良質のニンニク・唐辛子の生産地でもある。

 一方、北部では魚介類や塩辛がほとんど入らず、塩分や辛さも控えめで、汁気が多い特徴がある。どちらかというと保存食の性格が強く、長期発酵させて酸味を楽しんだり、調味料として使うこともあるようだ。

 北朝鮮ではさらに味が淡泊になり、唐辛子とニンニクをほとんど使わない汁気の多い水キムチが好まれる。平壌冷麺のスープにも水キムチの漬け汁は欠かせない。そして、ご飯にキムチの漬け汁をかけてゴマ油を振りかけ、お茶漬けのようにして食べるものがあるとか。

 このように、キムチは各地方の気候や文化によって変わり、代々受け継がれたその家の「秘伝」でもある。母から娘、姑から嫁へと伝えられていく韓国の「オモニの味(おふくろの味)」なのだろう。

どこの食卓にも並ぶ、たくさんのキムチと小皿料理。地域や家庭によって、食材や味付けが異なるのが興味深い。

どこの食卓にも並ぶ、たくさんのキムチと小皿料理。地域や家庭によって、食材や味付けが異なるのが興味深い。

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