雲仙こぶ高菜はアブラナ科の高菜の仲間。高菜は中国から伝わってきた野菜で、九州を中心に漬物の食材として栽培されている。吾妻町で種苗店を営んでいた峰真直さん(故人)が戦後、中国からこぶ高菜の種を持ち帰り、長崎の風土や食文化に適するように改良した固定種である。大きな株を手で開くと、葉
の内側の一枚ごとに親指大の白いこぶが見える。この部分がとくに柔らかく甘味がある。
ところが、こぶの形が逆に出来の悪い野菜と見られたり、そのあとに育成された三池高菜などに比べて収穫量が少なく、アブラナ科の野菜なので同じ仲間と交配しやすいこともあり、しだいに栽培されなくなってしまった。
雲仙こぶ高菜復活のきっかけになったのが、自家採種を中心とした有機農業に取り組んでいる岩崎政利さん。60~70種類の種を保存している自家採種のエキスパートだ。父が雲仙こぶ高菜を作っていたのは知っていたが、自分では栽培したことがない。けれども、農業高校に通っていたころに、峰さんの畑を見学したことを思い出す。種を探すうちに、峰さんの奥さんが家庭菜園で大事に育てていたことがわかったが、ほかのアブラナ科と交雑が進んでいた。